授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
黒川さんがパーテーション越しに答えると、「返事は?」と笑みを交えて目で訴えかけられる。

「わかりました」

こくんと小さく頷くと、私の返事に満足した黒川さんが胸ポケットから名刺を一枚取り出し、裏にペンでサッとプライベートの番号を書き込む。

「これ、俺の連絡先」

「ありがとうございます……」

黒川慧介……下の名前、慧介さんって言うんだ。

ステキな人だと思っていた黒川さんからまさかのデートのお誘い。あぁ、信じられない!

夢見心地のまま彼に見送られ、私は今にも頬が緩みそうになるのを堪えて事務所を後にした。


そして翌日。

「ええっ!? 黒川先生からデートに誘われた!?」

聖子の驚きの声が店の厨房に響き渡ると、私は慌てて人差し指を唇にあてがう。

「しーっ! もう、聖子ってば声がでかいよ」

今日も店内は朝から学生さんで賑わっている。パン選びに夢中になっているおかげで聖子の声は学生さんたちの耳には届かなかったようだ。

昨夜は寝ようと思っても黒川さんのことばかりが頭に浮かんであまり眠れなかった。うつらうつらとどんな洋服を着ていこうとか、髪型はどうしようとか考えているうちに空が白んでいた。

「菜穂、今日は早めにあがっていいから気合い入れてデート頑張って!」

両手を取られて上下にぶんぶんと振られる。

「う、うん、でもいいの?」

「大丈夫だって! お母さーん! 菜穂、黒川さんとデートだって!」

「ち、ちょ! もう! 聖子」

そして瞬く間に私が今夜、黒川さんとデートをすることが聖子の家族に知れ渡ってしまうのだった。

ん……?
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