授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「やぁ、松下さん、こんばんは。どうぞどうぞ」
事務所へ行くと、室内には坂田所長がひとりでデスクに座っていた。事務員の野木さんはもうすでに帰宅したようで、黒川さんの姿も見えない。部屋の隅では夕食なのか、ミケ子さんがカリカリといい音をさせてキャットフードにがっついていた。
「あの、お裾分けのパンをお持ちしました」
「おー! いつもすまないね。いい匂いがすると思ったら! ちょうど小腹が空いていたところだったんだ」
私は坂田所長のニコッとしたときに綻ぶ頬が好きだ。ベーカリーカマチのパンを見たときの表情なんか特に。
「あー、黒川君は夕方から拘置所へ接見に行ったきりまだ帰って来てないんだ。すまないね、たぶんすぐ帰ってくると思うから、座って待ってたらどうだい?」
パンの入った紙袋をガサガサと漁りながら、すまなそうにする。坂田所長は私と黒川さんが付き合っていて、一緒に住んでいることも知っている。空き巣事件のときはずいぶん心配をかけてしまった。
「いえ、今日はひとりで帰ります。意外とここからマンションまで近いし」
「だめっ! だめだめ! 君をひとりで帰したなんて言ったら黒川君に怒られてしまうよ。ああ見えて結構怒ると怖いんだから」
全力でブンブンと首を振ってから、とにかく座ってと相談室のソファへ促された。
「松下さんも仕事あがりで疲れているだろう? お茶くらいしかおもてなしできなくてすまないね」
「いえ、坂田所長こそお仕事中なんじゃ……」
「まぁ、ひと段落したところだし、少し君とふたりで話がしたかったんだ」
事務所へ行くと、室内には坂田所長がひとりでデスクに座っていた。事務員の野木さんはもうすでに帰宅したようで、黒川さんの姿も見えない。部屋の隅では夕食なのか、ミケ子さんがカリカリといい音をさせてキャットフードにがっついていた。
「あの、お裾分けのパンをお持ちしました」
「おー! いつもすまないね。いい匂いがすると思ったら! ちょうど小腹が空いていたところだったんだ」
私は坂田所長のニコッとしたときに綻ぶ頬が好きだ。ベーカリーカマチのパンを見たときの表情なんか特に。
「あー、黒川君は夕方から拘置所へ接見に行ったきりまだ帰って来てないんだ。すまないね、たぶんすぐ帰ってくると思うから、座って待ってたらどうだい?」
パンの入った紙袋をガサガサと漁りながら、すまなそうにする。坂田所長は私と黒川さんが付き合っていて、一緒に住んでいることも知っている。空き巣事件のときはずいぶん心配をかけてしまった。
「いえ、今日はひとりで帰ります。意外とここからマンションまで近いし」
「だめっ! だめだめ! 君をひとりで帰したなんて言ったら黒川君に怒られてしまうよ。ああ見えて結構怒ると怖いんだから」
全力でブンブンと首を振ってから、とにかく座ってと相談室のソファへ促された。
「松下さんも仕事あがりで疲れているだろう? お茶くらいしかおもてなしできなくてすまないね」
「いえ、坂田所長こそお仕事中なんじゃ……」
「まぁ、ひと段落したところだし、少し君とふたりで話がしたかったんだ」