授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
ゆらゆらと湯気を立たせた緑茶をテーブルに置き、坂田所長が私の向かいに「よっこいしょっと」と腰を下ろした。

「すみません。いただきます」

BGMもない静かな空間。聞こえてくるのは道を行き交う車の走る音だけ。いつも穏やかで人当たりのいい坂田所長だけど、こうしてふたりでいるとなんだか緊張してくる。なんとか気持ちを落ち着かせようとお茶に口をつけるも熱すぎて舌が痺れた。

「黒川君との生活はどうだい? あいつは仕事以外のことになるとてんで無頓着だから苦労するだろう?」

「いえ、そんなことは……」

確かに黒川さんは意外と不器用だし、無頓着と言えばこの前“あおば寿司”と書かれた寸胴な特大湯のみでコーヒーやらジュースをガブガブ飲んでいるのを見た。

『飲めればみんな一緒だろ? グラスやティーカップで飲むのは気分の問題だ』と言っていたのを思い起こすと自然と笑みがこぼれてしまう。
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