虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ランセルの想い人、マリアさん。

小柄で華奢。ふわふわした金の巻き髪と、温かな茶色の瞳の可愛らしい人だ。

ただあまり社交に慣れていないのか、とても緊張した様子だった。

出迎えた私に対しがばっと腰を折って挨拶をする。

「王妃様、お目にかかれて光栄でございます。アラベラ子爵の娘、マリアと申します」

ドレスを掴む手が震えているのが見えた。慣れていないだけでなくかなり気が小さい人みたい。

なんだか……小説で読んだアリーセの印象に近い気がする。

本当は平凡で気が弱く平和主義。それなのに環境のせいで目立ってしまい批判される立場。

マリアさんが萎縮しているのは、ランセルの相手として嫉妬されたり、悪く言われたりするせいもあるんだろうな。

なんだか気の毒になって私にしては優しい声が自然と出て来た。

「マリアさん、今日は来てくれてありがとう。ランセル殿下からお話を聞いて以来、会いたいと思っていたんです」

「そ、そんな、もったいないお言葉です」

ランセルが居たら、こんな奴に頭を下げる必要はない!とか言って怒りそう。

眉間に深いシワを寄せながら睨む顔が頭に浮かぶ。

嫌な映像を振り払い、マリアさんに着席するよう促した。

「ここは他に誰もいないので楽にしてくださいね」

「は、はい」

全く楽にしていない。むしろ緊張感が増したような。
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