虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
「貴族令嬢の中にはマリアに嫌がらせをしている者もいて、うんざりしていたのもある」

なるほど。そういった女性たちへの怒りが、私に向いたって訳ね……つまりとばっちりじゃない。

「言っておきますけど、私は嫌がらせなんてしていません。そもそもマリアさんの存在を知ったのはつい先日ですから」

「そのようだが、あなたは躊躇いもなく年のは離れた国王の後添えに収まった女性だ。警戒せざるを得ない」

「そうですか。前にも言いましたけど私は公爵の命令で王妃になったんです。そこに自分の意思なんて微塵も無かったので」

ランセルは怪訝な顔をした。

「それもにわかに信じがたい。はっきり物を言うあなたが公爵のいいなりになるとは思えないが」

ランセルの中で、私ってどれほど強い女の印象なのだろうか。

「私の意見なんて通りませんよ。屋敷からも出られず逃げられなかったし」

「逃げようとしたのか?!」

「え? いえ、もしその気になってもって意味です」

危ない、ついうっかり口が滑った。

「とにかく誤解は解いて頂けましたか?」

「そうだな。なぜ国王があなたを望んだのかはまるで理解不能だが」

私は内心溜息を吐いた。和解のムードを漂わせな
がらも、いちいち嫌味を言うなんて性格が悪い。

不愉快。だけどここは私がひくしかない。

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