虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「ところで先日、ランセル殿下がお怒りだった件ですけど」

「……私の兄弟の件か?」

「はい。いないとおっしゃってましたが本当ですか? 噂では愛妾に子供が出来ていたとか。それに国の最高位の方に子供が少ないのも不自然な気がします」

ランセルは小さく溜息を吐いた。

「噂の件は私も数年前に聞き知っている。だがあくまでも噂だ」

「どうして言い切れるのですか?」

「調査した。しかし国王の子が生まれた形跡すら見つけられなかった。恐らく駄目になったのだろう」

「そうですか……」

さすがランセルは抜け目ない。私が言い出すよりずっと前に確認していたんだ。

「その後、国王陛下が愛妾を迎えた事実はない。私の母と上手く行っていた訳ではないが、余計な争いが起きないよう自制していたのだろう」

さり気なく言ってるけど、国王と前代王妃って不仲だったんだ。

それで他に癒しを求めなかったのなら、ランセルが言う通り思慮深い人だったのかも。

思い込みの激しいランセルより冷静なのかな。そう言えば……。

「国王陛下とランセル殿下はあまり似ていませんね」

ランセルはぐいっと眉間にシワを寄せる。

「こんな時だけ気を使わなくていい。全く似ていないのは分かっている。私は母に似たのだ」

へえ。じゃあ前代王妃はすごい美女だったんだ。性格も母親似なのかな……。

「分かったか。国王陛下の私生児が犯行を企てた可能性はない。他を当たれ」

「はい、分かりました」

「期限まで日がないぞ。急げ」

「……はい」

和解しても期限は変えてくれないんだ。

なんて心が狭いんだろう。
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