虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ぶすっとしているとランセルが居間を見回しながら言った。
「メラニーはどうしている?」
「今はフランツ夫人に頼まれた仕事をしてると思いますよ」
「あなたには仕えていないのか?」
「直接的には。理由はよく分かってますよね?」
嫌味を込めて言うと、ランセルは気まずそうに視線を逸らす。
「……あれにはもう間者のような真似はさせない。広い心で戻してやってくれないか?」
珍しく遠慮がちに言われ、戸惑ってしまう。
「そうはいっても信用するのが難しくて」
「彼女は私の命令に忠実に従っていただけだ。いつもあなたを庇うような発言ばかりしていた」
「そうなんですか?」
メラニーが私を……。
「なぜだか、あなたを慕っていたようだ」
なぜだかって、いちいち失礼だな。
でもメラニーはランセルに従いながらも私を気遣ってくれてたんだ。それは嬉しい。
私だってメラニーのことは好きだし、今の気まずい関係は嫌だ。
「分かりました。直ぐには無理でも少しずつ関係改善をしていきます。でもランセル殿下はもうメラニーに変な命令をしないでくださいよ」
「分かっている」
ランセルはほっとしたように言うと居間を出ていった。
どうやら本当に彼女を気にしていた様子。
意外と優しいところは有るみたいだ。私以外に対してだけど。