虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
私の動揺に気付いたのか、エルマは勝ち誇った様に目を細める。

その時、「王妃様」とフランツ夫人の控え目な声が耳に届いた。

私ははっとして後ろを振り返る。

「皆さまがお待ちですよ」

フランツ夫人が、囁き声で言う。劣勢の私をフォローしてくれたのだと分かった。

「そうですね」

おかげで少し冷静さを取り戻した私は、小さく息を吐き再びエルマに話しかけた。

「ベルヴァルト公爵家夫人、皆を待たせていますので、先ほどのお話は改めて伺います。ただ親族とはいえ礼儀は守ってくださいね」

余裕のふりをして微笑み、ドレスの裾を翻しその場を去った。

池のほとりの薔薇園に向かう。綺麗に整備された道は歩きやすいはずなのに気持ちは重かった。

「大丈夫ですか?」

フランツ夫人が心配そうに声をかけてくれる。

「なんとか。まだ少し動揺してるけど」

「あまり気に病まないように。このお茶会に集中しましょう」

フランツ夫人の声を聞いていると、段々と気持ちが落ち着いて来る。

私が貴婦人たちと合流したしばらく後に、エルマとユリアーネがやって来た。

私はふたりと目を合わすことはなく、貴婦人たちとの交流を楽しむ。

王家の薔薇は好評で皆、楽しんでくれたようで、会話も弾んだ。

お茶会は概ね成功したと言える。相手が持つ私の印象も少しは変わったと期待出来る。

これからも定期的に開き、情報収集と交流をしよう。

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