二度目の結婚は、溺愛から始まる
しかし、どうやってごまかそうかと思っている隙に、またしても征二さんがバラしてしまった。
「3Dの犬だよ。雪柳さんみたいに、イケメンのビジネスマンにあんなかわいいものを自分でサーブするなんて、ずいぶん勇気あるなぁって感心したね」
「ゆ、勇気あるなって……征二さんが、持って行けって言ったんじゃないですかっ!」
「雪柳さんは優しい人だから、椿ちゃんを傷つけたりはしないとわかってた。実際、喜んでくれたよね?」
「それは、そうですけれど……」
「そんなにかわいかったのかぁ……見てみたかった」
「まったく同じじゃないけれど、こんな感じだよ。海音ちゃん」
征二さんのスマホに映し出されたのは、あの日のわたしが作ったものとそっくりの「犬」だ。
「これ……征二さんが?」
「そう。たまたま、お店に雪柳さんしかいなかったからね。『懐かしい』って喜んでくれた」
「かわいい! 確かにこれは鷲掴みにされるかも。忙しい時間帯には無理だとしても、メニューにあったらお客さんが喜びそう」
「そうだね……せっかく手伝ってもらうんだし、期間限定で二人のオススメを用意してもいいかもしれない」
「わたしも椿ちゃんのラテアートみたいに、お客さまに喜んでもらえるようなもの……ちょっと考えてみようかな」
『CAFE SAGE』を訪れる人は、征二さんの淹れるコーヒー、征二さんが作る料理、裏メニューのカクテルを楽しみにしている。
常連さんならやむを得ない事情をわかってくれるだろうが、一度遠のいた客足を取り戻すのは難しい。変わらず『CAFE SAGE』に通ってもらえるように、わたしと海音さんで何かできることはないか考えたい。
「わたしも、ラテアートだけじゃなく、ドリンクメニューを考えてみますね?」
「自家製のパンとか、スコーンなんかどうかな……京子ママにも差し入れしたいし」
張り切るわたしたちに、征二さんは優しく微笑んだ。
「よろしくね? 期待してるよ」