二度目の結婚は、溺愛から始まる


「蓮……どうしてそんなことを……?」

「椿を手放したくなかった」

「…………」

「七年前から、椿をもう一度取り戻せるチャンスが巡って来たら、手段は選ばないと決めていた」


目的を達成するために効率がよく、確実な方法を迷わず選ぶ。
実に、蓮らしいやり方だ。

そうまでして、わたしとの繋がりを手繰り寄せようとした彼を責める気持ちにはなれなかった。

なぜなら、強張った表情から、自己嫌悪に苛まれているとわかるから。
手段は選ばないと言いながら、優しい彼は非情にはなりきれない。


「騙すような真似をして、悪かった……」

「蓮っ」


その胸に飛び込んで、大きな身体を抱きしめて、蓮に(・・)騙されたなんて思っていないと伝えたかったが、場の空気を読むより自分の要求を優先する兄に邪魔された。


「おまえたちのノロケ話は後で聞く。まずは、この状況を説明しろ。椿」

「の、ノロケ話なんかしてないでしょうっ!? 柾のバカっ!」

「バカ? 兄にむかってバカとは、なんだっ!」


再び言い争い、睨み合う。
そんなわたしたちを見かねた山野さんが、説明を買って出た。


「九重社長。わたしから事情を説明させていただいてもよろしいでしょうか? 西園寺家で運転手を務めております、山野と申します」

「西園寺……?」

「椿さまは、倒れられたわたくしどものお嬢さま――花梨さまを助けてくださったのです」

「何だって? 救急車で運ばれたのは、彼女なのかっ!? 容体は?」


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