二度目の結婚は、溺愛から始まる
「梛。西園寺さんとわたしの兄が、お見合いしたことがあるって知ってた?」
「ああ……」
「無名の新人が、『KOKONOE』のコンペに参加できたのは偶然だったと思う?」
「…………」
沈黙が答えだった。
「彼女が、訴訟を起こしてまで離婚して、急いで帰国したのは……残された時間が短いとわかったからよ」
「……は?」
「梛に会いに来た日、彼女は退院したばかりだったの」
「…………」
茫然とした表情で立ち尽くす梛は、わたしの視線の先にいる人を見つけ、目を見開いた。
「短くて一年。長くても三年と言われたそうよ」
背筋を伸ばして椅子に腰かけ、海を眺める彼女の横顔に柔らかな笑みが浮かんだ。
その視線の先には、水際ではしゃぐ家族連れの姿がある。
「彼女がこれから梛に何を言うつもりなのか、わたしは知らない。でも、意地を張って守れるのは、自分のくだらないプライドだけだと思うわ」
「…………」