二度目の結婚は、溺愛から始まる
「簡単に言うと……ボトルでジャグリングしたり、ティン――シェーカーを投げたり、パフォーマンスしながらカクテルを作るスタイルのことよ。ショーみたいなものね」
わたしの簡単な説明に、蓮は「ああ、あれか」と頷いた。
「だいぶ昔の話だが、バーで見たことがある。味はともかく、なかなかの迫力だった」
「どこのお店で見たの?」
フレアバーテンディングは、普通のバーでお目にかかれるようなものではない。
「国外――大学生の頃の話だ。あまり騒がしいところで飲むのは好きじゃないから、一、二度行ったくらいだが……。そんなに簡単にできるようなものなのか?」
「できないわよ。ワーキングフレアでさえ、相当練習が必要」
「ワーキングフレア?」
「通常、カウンターの中など狭い場所で披露するものよ。エキシビジョンより派手さはなくて……こういう感じのもの」
わたしがスマホで動画を見せると、蓮はテーブルに置いたままになっていたティンを手に取り、ひょいっと放り投げる。
くるくると回転して落下するティンを背面で受け取り、左手から右手へ投げ渡し……わたしがさんざん練習してもできなかったことを、いとも簡単にやってのけた。
「こんな感じか?」
「ど、どうして、そんなにすぐできるのっ!?」
驚いて詰め寄るわたしに、蓮は肩を竦める。
「ん? これくらいなら、一度見ればできるだろ」
「わたし……できなかったんだけど」
「…………」
蓮は、あからさまに気まずそうな表情をする。
「……ズルイ」
「あのな、椿……」
「何時間やってもできなかったのにっ! わたし……バーテンダーに向かないのかも……普通のシェイクでさえ、上手くできないし……」
完全に八つ当たりだが、なけなしの自信も喪失しそうだ。
わたしには、そもそも「バーテンダー」の素質がないのではないかとさえ思えてくる。
「そんなことはないだろう? 運動神経さえ良ければできる」
慰めようとしてくれたのだろうが、蓮の発言は、さらにわたしのコンプレックスを刺激しただけだった。
「昔から、体育は苦手なのよぅっ!」