二度目の結婚は、溺愛から始まる
幼少期のアルバムは、わたしの中で「なかったこと」にしたいもの、第一位を飾る。
変顔でカメラのファインダーを覗き込んでいたり、柾にいたずらされて前髪を「ちょんまげ」にされていたり、お気に入りの玩具を取り上げられてぎゃん泣きしていたり……。
母は、かわいい娘の写真を撮るより、笑える娘の写真を撮ることに夢中だった。
その理由は、
『だって、どうせ見るなら面白い方が楽しいじゃない』
いい迷惑だ。
できれば、誰にも披露したくない。
しかし……。
子どもの頃のことならば、バカにされたとしても笑ってやり過ごせるが、いま現在のことはそうはいかない。
(梛にこれ以上バカにされ、呆れられ、文句を言われるなんて……絶対に、イヤっ!)
負けず嫌いが、羞恥心を上回り、わたしは頷いた。
「……うん」
「アルバムは菫さんが持ってるのか?」
「たぶん。お祖父さまの手元にも、いくらかあるかもしれないけれど」
「じゃあ、今度の週末にでも、会長のお宅にお邪魔するのはどうだ? 先日買った日本酒を渡したいし。俺も、柾に上手く言って、卒業アルバムを借りておく」
「……わかったわ」
祖父が「かわいい」孫の写真だけを手元に保管してあることを祈るばかりだ。
そうでなければ……泥酔しなくては、恥ずかしさに耐えられないかもしれない。
「じゃあ、とりあえず、さっき動画で見た技をやって見せてくれ」
「う、うん……」
成功する自信はまったくないままに、ティンを手に取り、放り投げて……背面で受け止められずに落とした。
「次は?」
右手から離れたティンは、放物線を描いて左手に……渡らず、床に転がる。
「……次」
空のボトルを放り投げ、落ちて来るところをティンで受け止める……はずが、ボトルは遥か彼方にむかって飛んで行く。
五十インチ以上はあろうかというテレビの画面に激突する寸前、蓮が間一髪でキャッチ。滅多なことでは怒らない蓮だが、無言でわたしを凝視するその顔は、思い切り強張っていた。
「…………ご、ごめんなさい」
「わざとじゃないのは、わかっている。だが……」
蓮は一旦言葉を切り、断言した。
「特訓が必要だ」