二度目の結婚は、溺愛から始まる
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お店が落ち着いているはずの十六時過ぎ。
『CAFE SAGE』へ向かうわたしは、筋肉痛の腕をさすりながら昨夜の特訓を思い返し、「はぁ」と溜息を吐いた。
(蓮が、上司じゃなくてよかった……)
梛のことをとんでもない「鬼」だと思っていたけれど、蓮のほうがもっと「鬼」だった。
フレアバーテンディングのコツを伝授すると言った蓮は、真夜中までわたしを指導した後、なぜか腹筋背筋腕立て伏せにストレッチまで含む練習メニューを作成した。
持久力を養うためにジョギングも入れられそうになったが、とても無理だと訴えて、何とか勘弁してもらった。
蓮とわたしの帰宅時間が合う時には、一緒にトレーニングすると言われてしまい、ズル休みはできそうもない。
(急がば回れということは、わかっているけれど……)
出来る限り、楽に会得したいと思うのはいけないことだろうか。
「いらっしゃいませ……椿ちゃん?」
「こんにちは、征二さん」
「どうしたの? 疲れてるみたいだけど……。何かあった?」
「いえ、ちょっと練習疲れで……征二さんの美味しいコーヒーが飲みたくなったんです」
「練習って、シェイクとか?」
「それもですけれど、別件もあって」
「ふうん? ま、座って。何がいい? ブレンド?」
「はい」
お店には、常連さんが二組いるだけ。
少しくらいなら、話をしていても大丈夫そうだ。
「奥さんの手術、無事成功してよかったです」
「ありがとう。退院はまだ先の話だけど、とりあえずひと山越えて、ほっとしたよ」
「退院されたら、ぜひお会いしたいです」
「うん。京子も、椿ちゃんに会いたいって言ってるよ。梛と対等に言い合える子を見てみたいって」
「それって……わたしがとんでもなく気が強いみたいじゃないですか」
「弱くはないよね?」
「それは……そうですけれど」
「梛は、仕事ならいくらでも愛想よく振る舞えるけれど、プライベートでは容赦ないからね。特に、遊びで声をかけて来るような女性に対しては、辛辣だし。京子の店の子たちが、何人あの毒舌で泣かされたことか……」
「そう、なんですね。てっきり、ナンパしまくっていたのかと思ってました」
「ま、それなりに遊んではいたけれど、あくまでも向こうから寄って来た場合だけ。割り切った付き合いしかしていなかったよ。椿ちゃんみたいに自分から攻めていくことなんて……長い間、していなかったね」