二度目の結婚は、溺愛から始まる
征二さんが梛の過去に触れたのは、話の流れからして不自然なことではないが……ただの偶然とも思えない。
お客さんの顔色一つで、いろんなことを察知する観察眼の持ち主だ。
わたしが、ただコーヒーを飲みに来たのではないことくらい、お見通しでもおかしくない。
「長い間ということは……昔は、ちがったってことですよね?」
「ちゃんと彼女がいたからね。フラフラはしていなかった」
「あの、征二さん……梛と話しました?」
「電話はしたけれど、繋がらなかったからメッセージ送ったよ」
「そう、ですか……」
直接、梛と話していないのでは、様子を確かめることもできない。
「どうしたの? 椿ちゃん。梛のことが、そんなに気になるなんて……」
事情が事情なだけに、軽々しく誰にでも話せることではない。
征二さんが、どこまで梛と彼女のことを知っているのかわからないまま、すべて打ち明けていいものかどうか迷う。
「もう一度、俺から電話してみようか?」
「……お願いできますか」
「かまわないよ。俺としても、明日ちゃんと出て来られるのかどうか、確認しておきたいからね」
征二さんは、「お客さんが来たら呼んで」と言い置いて、バックヤードへ引っ込んだ。
ほんの数分が、とても長く感じられる。
ジリジリしながら待っていると、首を振りながら征二さんが戻って来た。
「ダメだね。会社にも電話してみたんだけど、休んでいるみたいだ」
梛と連絡がつかないまま、黙って明日まで待つなんて、とてもできそうになかった。電話もメールもSNSもダメなら、直接行くしかない。
「征二さんっ! 梛の家の住所、知ってますか?」
「知ってるけど……」
「教えてください」
「いや、でも、椿ちゃん……」
「行かなきゃならないんです。わたしのせいだから……」
梛に、真実を話したこと自体は後悔していない。
けれど、もっとほかにやり方があったのではないか。
もっと言葉を選んで、ショックを和らげる術があったのではないか。
そんなことを考えてしまう。
しかし、征二さんは焦燥感に駆られるわたしに反し、すぐには頷いてくれなかった。