二度目の結婚は、溺愛から始まる
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無事、梛と花梨がおさまるべきところにおさまったのを見届けたわたしと蓮は、どちらともなく手を繋ぎ、パーキングまでの道のりをのんびり歩いた。
「よかったわね」
「ああ」
「彼女の病気、治るといいわね」
「柾が、いい医者を紹介すると言っていた」
「せっかく結婚するんだもの。末永く、幸せでいてほしいわね」
十年、二十年……この先もずっと。
そんな思いで結婚しても、続けられずに別れてしまう夫婦は少なくない。
人の心は良きにつけ悪しきにつけ、変わるものだ。
愛情が深まることもあれば、薄れることもある。
互いの努力だけでは、結び続けられない縁もあるし、切っても切れない縁もある。
花梨が言っていたように、わたしたちがお互いの気持ちに寄り添い続けているかどうかは、正直なところ、わからない。
そうありたいとは思うけれど、『夫婦』なのだと胸を張って言えるほどの自信はなかった。
(わたしは、蓮と過ごす毎日を積み重ねていけたらいいと思っているけれど……蓮は、どう思っているの?)
いまのわたしたちは、梛と花梨のように法的に結婚を急ぐ必要はない。
お互い大人だから、一緒に暮らすことに家族の許可はいらないし、責任云々という話にもならない。
兄や祖父は再婚しろとしきりに言うけれど、このまま恋人同士として同棲を続け、事実婚のような形を取ることもできる。
周囲を巻き込みたくなければ、その方が「別れる」ことになったとき、面倒が少ない。
けれど、現在の状況は「そうしよう」と積極的に決めたわけではなくて、「とりあえず」お試し中なだけだ。
居心地の良さにいつまでも甘えていたくなるが、いつか、どこかの時点で、この先どうするかを話し合わなくてはならない。
それは、お互いの将来を思えば、早ければ早い方がいいはずで……。
「椿は……もう、結婚はイヤだと思っているのか? 再婚したくはないのか?」
蓮はわたしの思考を読んだわけではないと思うが、いままさに考えていたことに言及され、うろたえる。
「そ、それはっ……」
「俺ではなく、他の人間でも?」
「したくないとか、イヤだとか、そんなこと、考えていない。ただ……蓮以外と結婚したいと思ったことないから……よく、わからない」
「それはつまり……再婚も、俺以外とは考えられないってことか?」
「え? あっ……」