二度目の結婚は、溺愛から始まる
無意識に探した蓮の姿は、蒼たちに祝福の言葉をかける人の輪の外にあった。
花梨と共に家族連れの男性と談笑していて、その足元では子猫がぴょんぴょん跳ねている。
三、四歳くらいだろうか。傍らの母親らしき女性が宥めるのも聞かず、イヤイヤと首を振り、しまいには蓮の足に抱きついた。
蓮は「降参」を表す苦笑と共に、女の子を抱き上げる。
予想外の高さにびっくりしたのか、女の子はぎゅっと蓮の首にしがみついたが、恐る恐る辺りを見回して、笑顔になった。
興奮した様子で蓮に何事かを訴え、蓮は優しい笑みを浮かべて耳を傾ける。
そんな微笑ましい二人の姿を見つめていたら、蓮が突然こちらを振り向いた。
その視線の先にいるわたしに気づいた女の子が、小さな手を振ってくる。
反射的に手を振り返しながら、歪んでしまいそうになる顔に無理やり笑顔を貼り付けた。
胸が、痛かった。
でも、その痛みは、罪悪感や喪失感のせいではなく……
(わたし……すごく、嫉妬深いのかも)
いま目にしている「幸せ」な光景を、「わたし」が蓮と分かち合いたかった。
蓮が幸せになれるなら、相手は自分でなくてもいいなんて、思えない。
相手の幸せを願う「大人の女」になんて、なれない。
願い、祈るだけでは、満足できない。
「わたし」が、蓮を幸せにしたい。
そう、自覚してしまった。
『おまえは、蓮を幸せにすることも、不幸にすることもできるんだよ』
柾が言ったように、わたしが蓮を幸せにも不幸にもできるなら、蓮もまた、わたしを幸せにも不幸にもできる。
わたしの人生に「蓮」は必要不可欠で、
降っても晴れても、
いつでも傍にいてほしい存在だ。
友人として、恋人として、夫として、家族として――。