二度目の結婚は、溺愛から始まる


「準備しなくていいの? 椿」


背後から肩を叩かれて、我に返った。


「引き継ぎますよ、梛さん」


振り返れば、涼と愛華がいた。

二人は、ケータリング業者のスタッフと共にサーブを含めた料理全般のケアをしていて、わたしと梛がフレアを披露している間、ドリンクもカバーしてくれる。


「竜が合図してる。行くぞ」


緑川くんの目配せを察知した梛が、月桂樹の傍に用意されたテーブルへ向かって歩き出す。


「あとはよろしくね?」

「まかせて! 椿こそ、蓮さんが惚れ直すようなカッコイイところ見せなさいよ?」

「頑張れよ! 椿」


涼と愛華は、励ましの言葉と共に、左右からわたしの背中を平手打ちした。


「――っ!」


(いったぁ……)


涙目になりながらも軽く頷き、慌てて梛の背を追いかける。

フレアバーテンディングのために用意されたテーブルには、ボトルや道具があらかじめ並べてあるので、準備はいらない。位置を確認するだけだ。

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