二度目の結婚は、溺愛から始まる
ここまで来れば、もう大丈夫。
ほっとして、胸を撫で下ろす。
梛は蒼に青を、わたしは紅さんにピンクを、それから緑川くんに緑のカクテルを手渡した。
残りは、近くにいる人へランダムに配る予定だったが、わたしは蓮に梛の作った緑のカクテルを渡すついでを装って、ピンクのカクテルを花梨へ、最後に青のカクテルを梛に押し付けた。
「何のつもりだよ?」
「これ持って、ちょっとじっとしてて!」
怪訝な表情をする梛に、蒼が素早く歩み寄ると自分の胸に着けていたブートニアを梛の胸へと移す。
「手をお借りしますね?」
紅さんは、一旦わたしに手にしていたカクテルを預けると、花梨の手を取り、自分のリストレットを彼女の手首に巻き付けた。
「え? あのっ……」
準備が整った二人へ、緑川くんが満面の笑みを向ける。
「お二人とも、一緒に前へどうぞっ!」
蒼と紅さんに引っ張られるようにして、梛と花梨も月桂樹の前に並んで立つ。
緑川くんが、戸惑う二人を元気いっぱいに祝福する。
「梛さん、花梨さん、ご結婚おめでとうございます!」
ようやくサプライズに気づいた梛と花梨は、目を丸くして顔を見合わせた。
唖然としている二人へ、温かい拍手と祝福の声が贈られる中、緑川くんは諸々の紆余曲折についてはすっ飛ばし、二人が長年の愛を実らせたことだけを紹介し、グラスを掲げた。
「今日、この場にいるみなさんは、ものすごくラッキーです! 新郎新婦が二組で、幸せも二倍なんですからね! 絶対に、ご利益ありますよっ! ということで…………カンパーイっ!」
ご利益って何だ、と突っ込むような野暮はひとりもいない。
表情を強張らせていた梛も、はにかんだ笑みを浮かべる花梨を見下ろし、表情を和らげた。