二度目の結婚は、溺愛から始まる


『……どういう意味だ? おまえ……蓮と再婚することにしたのかっ!?』

「まだ、そうと決まったわけじゃないけど……」

『何をモタモタしてるんだっ!』

「あのね、段取りってものがあるのよっ! とにかく……ふたりで、幸せになりたいの。蓮を幸せにできるのは、わたしだけなんでしょう?」

『おまえだけ(・・)かどうかは知らないが、まあ、おまえでもできないことはないだろうな』

「ちょっとっ! この前と言ってることがちがうじゃないのっ!」

『大げさに説教しないと、おまえが聞き流すからだっ!』

「それで、弁護士の連絡先は?」

『俺から連絡する。ただし……無理強いはダメだぞ? かわいい妹を傷つけたくないからな』


どうやら、兄は年の離れた異母妹を溺愛しているらしい。


「ねえ、もしかして……会ったの?」

『いや。昨年、お祖父さまと七五三の着物をプレゼントした時に、こっそり見に行っただけだ。入学式は、残念ながら仕事で行けなかった』

「…………」

(お祖父さまといい、柾といい……ほとんどストーカーじゃないの)

『たぶん断られることはないと思うが……蓮には何と言うつもりだ?』

「蓮も一緒に行くのよ」

『は?』

「わたしの運転で」

『え?』

「ついでに、短期間で運転免許を取れる教習所があったら、紹介して?」


完全に失効してしまっているので取り直しが必要だった。


『……いつ、会いに行くつもりだ?』

「来月。かわいい妹の誕生日会に」


電話の向こうで、柾が息を呑むのが聞こえた。

 
『椿……免許を取るのも、彼女たちに会うのもいいことだと思うが、何もその日じゃなくともいいんじゃないのか? その日は……』


柾が反対するのも、もっともだ。
でも、誰に、どんなに反対されても――たとえ蓮に反対されても、折れる気はなかった。




「その日じゃなきゃ、意味がないのよ。この先、ずっと忘れることができないのなら……楽しくて、幸せな思い出で上書きしたいから」




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