熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ふふ……っ」
「ほーれ! 早くしないと置いていくぞい!」
「わっ、待ってください!」
反対に、弾む鼓動が花の顔を綻ばせた。
待ちくたびれているぽん太とちょう助を追い掛けた花の足も、いつになく軽やかだった。
♨ ♨ ♨
「ん~~~……っ、美味しいっ」
広い熱海梅園内を散策し終えた三人は、園内に備え付けられたベンチの上で一休みをしていた。
花が頬張っているのは、園内の売店で買った『梅もなか』である。
「この甘酸っぱい梅餡と、サクッとした皮が絶妙〜っ!」
梅の花の形をしたピンク色の皮も、梅園に咲く見事な梅の花と一緒に撮れば、今で言うSNS映え間違いなしというものだろう。
「ほんに花は、美味そうに食べるのぅ」
「だって本当に美味しいんですもん! あ、ぽん太さんが飲んでる甘酒も美味しそうですね」
「ふむ、見事な梅の花を眺めながら呑む甘酒は、いつの時代でも風流じゃよ」
紙コップに入った甘酒を呑みながら、のほほんと梅を眺めるぽん太は背中を丸めた。
百年以上を生きる付喪神のぽん太はもう何度、ここでこうして甘酒片手に梅を眺めてきたのだろう。