熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「それで……次はどこに行くんだよ」


 花とは色違いの焦色の梅もなかを食べ終えたちょう助が、相変わらずの仏頂面でふたりに尋ねた。

 花がハッとして顔を上げると、隣のぽん太はズズッと甘酒を一口啜った。


「どこって……ふぅむ、どこにするかのぅ」


 顎髭を撫でながら、ぽん太が宙を仰ぐ。


「まだ桜にはちと早すぎるしのぅ。それなら海か……とも思うが、花は既に熱海サンビーチには行ったことがあるしのぅ」


 ふむ、と考え込むぽん太を見て、花はあれは観光に入るのか?と、首を傾げた。

 けれど言われてみると確かに、せっかくならまだ一度も行ってない場所やものに触れてみたいという欲も出る。


「ねぇねぇ、さっき食べたアジフライ、すごく美味しかったね〜」

「身も厚くて食べ応えあったよな。"てんすけ茶屋"、行って正解だったよな」


 そのとき、先程のクシャミカップルが三人の前を通り掛かった。

 ふたりの会話を耳にした花は、思わずゴクリと喉を鳴らす。

 
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