熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「ヤバイです、活きあじフライ、美味しすぎます……!」


 絶賛する花の向かいで、ちょう助が「醤油も美味いな」と頷いている。


「フォッフォッ、ふたりとも満足そうで何よりじゃ。ああ……そういえば、週末に来る虎之丞も鯵が好物とのことじゃったのぅ……」

「あ……」


 ぽん太の言葉にハッと我に返った花は、箸を止めてぽん太を見つめた。


(そうだ、そうだった……!)


 すっかり熱海観光気分になっていて、虎之丞のことを忘れていた。


「……そういえば、前に登紀子さんもそんなこと言ってたな。虎之丞さんが来るときは、新鮮な鯵を仕入れておくんだ……って」


 やはりつくもの前料理長であった登紀子さんも、虎之丞攻略のために好物の鯵を使っていたのだ。


「だから登紀子さんはよく、鯵の活き造りや鯵のタタキ、なめろうを出していたけど……。俺の知る限りでは、活きあじフライは出したことがなかったはずだ」


 ちょう助の言葉に目を丸くした花は、思わずゴクリと喉を鳴らした。

 
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