熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「じゃ、じゃあ、週末は活きあじフライをメインにした御膳を出して、虎之丞さんをおもてなしするっていうのはどうかな⁉」
花の提案に、ぽん太は「ほぅ」と目を見開いて、ちょう助も改めて考え込むような仕草を見せる。
「確かに、それなら虎之丞さんにも喜んでもらえるかもしれないけど……。でも、俺に登紀子さんの作る料理の味を超えられるかが問題で……」
「超えられるよ!」
「え……」
「というか、超えられるか超えられないかじゃなくて、ちょう助くんはちょう助くんらしい料理を出して虎之丞さんをおもてなしすればいいんだよ!」
まるで自分のことのように胸を張った花は、相変わらず目を輝かせてちょう助を見つめる。
「ちょう助くんの作る料理が最高に美味しいってこと、私はよく知ってるもん。だから絶対大丈夫! ちょう助くんの作った活きあじフライなら、頑固な虎之丞さんを満足させてあげられるに決まってる!」
断言した花を前に、ちょう助は一瞬固まったあとでフイッと視線を下へと逸らした。
仮にもちょう助は花を袖にしていたのだ。それなのにどうして花は自分を励ますようなことを言ってくれるのか……ちょう助の心は動揺で揺れていた。
「……っ、なんだよそれっ。なんでお前がそんなに自信満々なんだよ」
「ふふっ、そして私も、ちょう助くんの作った活きあじフライにあやかれるんじゃないかと期待もしてます」
調子の良い花はそう言うと、半分にしたあじフライを頬張った。
その花の様子を横目で見ながら、ちょう助は改めて自身のあじフライへと目を落とす。