熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「おお、久しぶりだのぅ! つくもの面々よ」
現れたのは、八十過ぎのご老体という割には屈強な身体つきをした大男であった。
侍を思わせる渋色の着流し姿で、前庭に敷かれた石畳を闊歩してくる様は実に威厳と風格に満ちていた。
「虎之丞様、本日は極楽湯屋つくもへようこそお越しくださいました」
八雲の言葉を合図に、後ろに控えていた花と黒桜も頭を下げる。
「ガハハっ、出迎えご苦労。八雲もこの一年でまた背が伸びたかのぅ……と、お前さんも流石にもうそんな年ではなかったか」
虎之丞の言葉に八雲は応えるように、長いまつ毛に縁取られた瞼を下ろした。
虎之丞は立っているだけで他者に威圧感を与えるような男であった。
豪快という言葉がこんなにも似合う男に会うのは初めてだ……と、花は思わず緊張で喉を鳴らした。