熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「はっ、はい! 頑張らせていただきます!」


 そうしてすかさず虎之丞から鞄を受け取った花は、予定通りに虎之丞を客室まで案内することとなった。



 ♨ ♨ ♨



「ふぅーむ、とりあえず部屋の掃除はよくできておるようだな」


 虎之丞は部屋につくなり、まず掃除が行き届いているのかを隅々までチェックした。

 入口で控えていた花は、「ありがとうございます」と遠慮がちな笑顔を浮かべてそれに答えたが、内心では鼻を天狗のように延ばしたい気分だった。

 虎之丞が重箱の隅をつつくような男であることは、黒桜から聞いていたのだ。

 だから花は昨日一日かけて、本日虎之丞が泊まる予定のこの部屋を徹底的に掃除した。

 備え付けられているゴミ箱の裏まで汚れていないかを確認し、ピカピカに磨き上げる徹底ぶりだ。

 お客様が気持ちよく泊まれるように部屋の掃除を徹底するのは当然といえば当然のことなのだが、これだけ神経をとがらせて掃除したことは人生でも初めてと言っていい経験だった。

 
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