熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ご、ご夕食は一時間後を予定しておりますので、先に、つくも自慢の温泉をお楽しみください」
常連客の虎之丞であれば、花が提案などせずとも宿での楽しみ方は重々承知しているだろう。
それでも前日までにぽん太が用意した接客マニュアルを参考にしていた花は、マニュアルに書かれたとおりに虎之丞に温泉を勧めた。
「熱海温泉は非常に効能も素晴らしく──」
「温泉だぁ〜〜〜?」
しかし、どうやらそれは虎之丞の地雷のひとつだったらしい。
「娘っ。貴様はわしに、飯の前に風呂に入れと言っとるのか!?」
(え……っ)
突然凄んだ虎之丞は、ドンッ!と座卓を拳で叩くと鋭い眼光で花のことを睨みつけた。