熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

(まさか……まさか、ね)


 あの八雲のことだ、単純に花の力不足を予想した上で動いたとも想像できる。

 虎之丞のもてなしの件で八雲とやり合ったことを思い浮かべた花は、甘い考えを振り払うように頭を振った。


(それにしても……大丈夫なのかな?)


 花と入れ替わりで部屋に入った八雲は、あの虎之丞の相手をすることができるのだろうか。

 けれど将棋を差すくらいだ。花よりは余程マシなのは間違いない。


「そうだよ。あの人が、助けてくれるわけないしね」


 考えてもキリがない。

 ひとり、モヤモヤとしていた花であったが、頬をパチン!と叩いて再度気合を入れ直した。

 今日の一番の見せ場は、このあとの夕食の時間と決まっているのだ。

 そこで虎之丞を満足させる一品をお出しすることが、おもてなし成功の鍵を握っているのは確かだった。

 
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