熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「よしっ! 今はとにかく、このあとのことを考えないと」
そうして花は踵を返すと真っすぐに、ちょう助の待つ厨房へと向かった。
厨房の中ではちょう助と調理器具が忙しく動き回っており、夕食の準備をつつがなく続けていた。
「そろそろ、ご夕食の時間ですが準備はよろしいですか?」
黒桜が花に声を掛けてきたのは、夕食の予定時刻の十五分前だった。
「はい! 大丈夫です!」
元気よく答えた花は、料理の乗ったお盆を手に持ち、虎之丞の部屋まで運ぶ準備を整える。
「前菜、小鉢、お造り、それに鍋物……」
メイン以外を見ても、どれも手の込んだ品ばかりだ。
けれど花ひとりでこの量を一度に運ぶのは難しいため、最低でも三度に分ける必要があった。