熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ここから先は、こちらの仲居がお部屋までご案内いたします」
「え……。あ……っ、も、申し訳ありません!」
八雲の声に再び我に返った花は、慌てて深く頭を下げた。
「本日、仲居を勤めさせていただきます、花と申します。すぐに、お部屋までご案内させていただきます!」
そして、改めて自分の口で挨拶をすると、傘姫に恐縮しながら彼女を用意していた梅の間へと案内した。
傘姫を部屋まで連れて行く間、花の脳裏にはふたりの姿が焼き付いて離れなかった。
それほど花の目にはふたりがお似合いに見えたのだ。
旗から見たらまるで、恋人同士のように──理想的なふたりだった。
「お食事まではまだお時間がございますので、その間、是非つくも自慢の温泉をお楽しみください」
結局、案内を終えるまで傘姫と会話らしい会話をすることもできず、接客面を見たら最低点に違いない。
それでもなんとかひと通りの説明を終えた花は、三つ指をついて頭を下げると、梅の間をあとにしようとした。