熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「……ありがとう、ちょう助くん」
そんなふうに真っすぐなちょう助だからこそ、花も素直になれるのだ。
花はちょう助にお礼を言うと、小さく息を吐いてから苦笑した。
「花? どうしたの?」
「……うん。なんていうか……確かに、八雲さんの言うとおりだなぁと思って。付喪神様たちはみんな、自分の気持ちに正直で、裏表がなくて……温かい」
ぽつりと溢した花は視線を手元に落とした。
改めて思い返すと、花がこれまで出会ってきた付喪神たちは皆個性的だったが、みんな自分の気持ちに正直な神様ばかりだと気がついたのだ。
鏡子も、ぽん太も黒桜も、ちょう助も……。虎之丞も自分の気持ちに正直だったために、あのような横暴な振る舞いをしていたのだ。
そして傘姫も、一途に想い人に心を寄せている。
これまで花がもてなした付喪神たちも皆、それぞれに個性豊かな面々だった。
(だけど人は時々、すごく残酷で自分本位で、自分勝手になるもんね……)
直近の苦い失恋が脳裏をよぎって、花の胸は針の先で刺されたように、僅かに痛んだ。