熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「だから多分、傘姫も俺と同じで、花に何か感じるところがあったから自分のことを話したんだと思う。……八雲さんだって、多分同じだよ。相手が花だからこそ、自分の過去の話を打ち明けたんじゃないかな」
そう言うちょう助は、八雲が子供の頃の話を花にしたのを聞いていたのだ。
狭い厨房内なのだから、聞こえていて当然と言えば当然だろう。
すべてを見越した上で笑うちょう助を前に、花は鼻をスンと小さく鳴らして唇を噛み締めた。
「傘姫の相手がどんな人だったのかはわからないけど、でも、傘姫が今でも想い続けるくらいの人なら、きっと花みたいに優しい人だったんじゃないかな」
屈託のない笑顔で言うちょう助を前に、花は喉の奥がヒリヒリと痛むのを感じた。
「ありがとう、ちょう助くん……」
「どういたしまして! 俺で良かったらいつでも話聞くから言ってね。いつも味見してもらってるお礼だよ」
嘘のない笑顔が、花の心を鷲掴みにする。
つくもに来て泣くことを許された花は、涙もろくなっていた。