熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「泣くのを堪えて楽になるならいいんですけど、堪えたところで気持ちが晴れるわけではないですよね」


 そう言うと花は静かに微笑んだ。

 そばで聞いていた八雲は──片眉を持ち上げ、意表を突かれた顔をする。


「花さん……」

「だけど八雲さんが今言ったとおり、本物の和尚様に会えるわけではありません。それでも傘姫様は、彼にもう一度、会いたいと思いますか?」

 
 花の問いに、傘姫は着物の袖で顔を覆いながら、とても小さく頷いた。


「……そういうことです、ぽん太さん。聞いているんですよね?」

「ほい、もちろん。あい、わかった。それでは、傘姫。お前さんの記憶を少々、覗かせていただくぞ」


 花の言葉を合図に、また破裂音とともにぽん太が現れた。

 突然のぽん太の登場に傘姫は驚いた様子だったが、そんな傘姫を気にする様子もなくぽん太は傘姫の額に右手の肉球を押し付けた。

 
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