さよならが言えなくなるその前に



岸田さんは、取引先のひとで



3歳年上で頼りがいがあって



いつも優しくて



私が接待で



パワハラまがいの 



お酒の飲み方 させられていた時に



かばってくれた。




代わりにお酒飲んでくれて



「大丈夫?



無理しないようにね」



「立花さん。



いつもがんばりすぎるから、心配だな」



って。



ほんとにいつも、優しい言葉をくれた。



わたしは、いつも会社では




どちらかというと




頼られる方で



課長も何でか、



何かっていうと



『立花さん。お願いできるかな』




って。





残業から、新人さんのお世話から




仕事の遅いひとのヘルプまで…




『ほら、若い子は



ちょっと厳しくすると



後が大変だから』



(つまり、ベテランの厳しいわたしの上司には




お願いできない。)




って。




いや。わたしは?




がっつりその上司に教わりましたがね




まだ、24なのに



わたしの立ち位置どこ?





同い年の子だっているのに…




性格?



マジメで、キッチリやりきってしまおうと




するから?




だって。それが仕事だし。




まあ、それで人の役に立ってるなら



いいか。




って思ってたけど。




偶然聞いてしまったのは




「大丈夫だよ。




『間に合いません。どうしよう』



って言っとけば




立花先輩がまた




『大丈夫ー?』って来てくれるよ笑」




「めっちゃ、便利笑」



なんて、後輩の話聞いちゃうとさすがに




へこんじゃうよ。




わたしって…



じゃあ、どうしたらいいの?って




可愛げないわたしが悪いのかーなんて




思ってたわたしに





そんな、立花さんはほんとに



頑張り屋さんだな。なんて



言ってくれて。



好きなんだ。




俺と一緒にいてくれないかな。



そう言ってくれたのに…



付き合うことになって



わたし、心のなかで



もしかして、このひとと結婚するのかな。




ばかみたいだけど、



岸田さんが運命のひとなのかな。



なんて




そう、思ったりしてた。



全部、全部。



嘘ばっかりだったのに…。




こんなに




信じていたなんて。
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