さよならが言えなくなるその前に



那智さんの部屋で




那智さんの手が、レミに触れる。




レミはレミ全部が心臓になったみたいに




ドキドキが響いてる。




那智さんをちゃんと見ることが





できなくて




視線が下を向く


レミを引き寄せる那智さんの




襟元は空いていて…



首すじが、鎖骨が



かっこいい。




…じゃなくて



レミ。




こんなの…




じっとしていられないくらい




ムリっ。





「…やっぱり、那智さん。



わたし



ひゃっ。」



那智さんのくちびるが首に触れた。




「今さら」




笑う那智さん。




だって、だって



恥ずかしいのもあるけど




身体の相性って



それがダメだったら…ダメってことでしょ?





振られちゃうの?




わたしそんな、たくさん




経験ないし。



上手く?



なんて、どうしたらいいか…



つまんないって



那智さんに思われたら




やだ。




やだ。



せめて、勉強してから…




とかにしたい。




今は


ムリっ。




「ん?」




那智さんが下ばっかり向いてる



レミの髪を優しくかき上げて



聞いた。



「だって、だって



えっと



心の準備が…」



「ガキかよ。



お前はただ



おれに抱かれてればいいんだよ」




そう言って、那智さんがレミにキスした。





那智さんの触れる手が




わたしに触れる視線が





初めてなんかじゃないくせに



恥ずかしくて



嬉しくて




隠したくて




逃げ出したくて



幸せで




…切なくて。




「レミ。



目開けな」




那智さんが言う。



やだやだ。




ぜったいっ。



「…ムリ」



「レミ」




那智さんがレミの名前



呼ぶだけで



レミは那智さんに




逆らうなんてできなくて




レミが目を開ける。



息をきらして



「…なん、で。笑うのぉ」




泣きそうになるレミに



「ふ。


だって、かわいい顔するから」



え?



「おれ、お前のその



困ってるみたいな顔



好きみたい」




そう言って




那智さんがレミの額にキスした。

































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