さよならが言えなくなるその前に



「かんぱーい」



居酒屋で、枝豆つまむ。



「最近仕事どう?」



「え。営業の松田さん結婚すんの」



「研修のときの、あの事件覚えてる?」



なんて、ひと通り



盛り上がったら



三島が言った。



「元気みたいだな」



「んー?



元気だよー?」



あ、あれか



別れたこと?



「この前も大丈夫だって言ったじゃん。



ほんと、もう元気」




「…まあ、



忘れるには、次の恋って言うしな」



なんて、三島が言うから



チュウハイ吹き出しそうになった。



ちょっと焦らせないでよ。三島ぁ。



そんな優香の様子をみて




「え、もしかして



もうそういう相手いたりする?」



なんて聞くから




「いるわけないじゃんっ」って



優香が食い気味に答える。



「何よ。三島。



あんたこそ」



「は?」って、



三島が焦ったみたいに言う。



「好きなひととかいるの?」



「いや、まあ。」



らしくなく照れたような表情。




「当てようか」




「えっ」




「美香ちゃんでしょ。」





「…は?」三島が言う。



「この前思ったんだよね。




2人すっごい



お似合いだし。



何気に気が合うし。



何か



いい感じだったよね?」




あれ、もしかして今日



それで飲みに誘ったのかな。



「…何でだよ」



三島が言う。



「あれ、違った?」




「お前ほんと…」



「え?何よー違うの?



ひと肌脱いであげようかと」




「いや、お前…



見当違いだし」




呆れ気味の三島。



「えー。そうなの?



お似合いだと思ったのにー」




はーっ。




って、でっかいため息の三島。




何よ、そんな呆れなくても。




いいじゃん?
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