さよならが言えなくなるその前に



クラブレッドの横の路地。



時折大きく響く喧騒。



胸が痛むのは



今から



このひとを傷つけるから。






翔輝の瞳にネオンが



反射して



光って見えた。




何か…綺麗だし。




…早く言わなきゃ。




早く



こくん。




優香の喉が上下した。




「翔輝。




助けてくれてありがとう。」





「考えたら



私のピンチには



いつも、いてくれて」



助けてくれた。



「ほんとうに、ありがとう」




優香は翔輝の前に立って



深く頭を、下げた。



「…どうした?」



ジッと翔輝がわたしを見てる。





「わたしね。



もう24なの。 




もうすぐ25になるし。」




ちょっと笑って優香が続ける。



「それでね、今。



わたし



結婚考えてる人がいる。




会社の同僚で



気が合って、私のことよく知ってて




きっと、あの人となら



わたし、幸せになれる」



優香は真っ直ぐ翔輝の目を見つめる。



何でだろう。



さっきまでハッキリ見えていた



翔輝の瞳の中が


よく



ミエナイ。



「だから、翔輝。



もう私には構わないで?」



タイムリミットが視界にちらついている



25歳のスキはゴールありきで



好きだけじゃ恋愛は始められないの。



私はもう



ずるいくらい大人だから



だから。



お別れしなきゃ。




翔輝。



あなたに



ほんとうに



サヨナラが言えなくなる



その前に




わたしに




サヨナラさせて。




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