となりの一条三兄弟!


家の造りはうちと同じだった。

玄関からリビングに続く廊下があって、右手には脱衣場とお手洗い。左には2階へと続く階段がある。

リビングには明かりが点いていた。ドアを開けようと手を伸ばすと、スッと勝手に開いてくれた。


換気扇が回っているキッチンのほうからは、食欲をそそられるようないい香りが漂っている。

テーブルには四人分のランチョンマットが敷いてあって、ピンク色はたぶん私の席。


……昴さん、どこかな? 

キョロキョロと周りを見渡しながら、火が付けっぱなしになっている鍋はなにかを煮込んでいるのか、グツグツと沸騰していた。

吹き零れないか様子を見に行くと、まな板の上には調理途中の肉の塊が。

包丁はグサリと刺さったままで、その周りには赤い血が飛び散っている。


『最近、変質者の目撃情報がある』

『動物を切りつけたりしてる人を公園で見かけた』


なんでこのタイミングであの噂が頭をよぎったのだろうか?

肉の塊をよく見るとウサギの体に……見えなくもない。


はは、まさか。まさかね。

笑って誤魔化しながらも、胸騒ぎが止まらない。


すると背後に気配を感じて振り向くと、いつの間にか昴さんが立っていた。


「茉莉ちゃん、いらっしゃい」

昴さんはメガネの奥で、ニコリと目を細めている。

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