となりの一条三兄弟!
その日の放課後。授業は難なく終わったけれど、女子たちはまだ飽きずに三兄弟のことを話している。
住んでる家はどこなのかな?なんて噂していて、なんだか他人ごとではいられない。
三兄弟の家が知られたら、私の家も必然的に知られることになる。
どこにでもあるような住宅街だけど、家々の距離は近くて、一条家はまさにうちから目と鼻の先にある。
なんなら、熱々のスープでさえ、湯気を逃がさずに運べてしまえるほどの近さだ。
「ねえ、茉莉。今日の帰りどっか寄ってかない?」
そんな中で、景ちゃんが遊びに誘ってくれた。駅前に新しくクレープ屋ができたらしいので、おそらくそこに行くつもりなんだろう。
すごく行きたい。クレープも食べたい。でも……。
「ごめん。今から理科のノート職員室に持っていかなきゃいけないんだ」
「手伝おうか?」
「でもあの先生やたらと雑談が好きだし、また昆虫の起源について永遠に語られると思う」
「あー、それは面倒かも。じゃクレープはまた今度ね」
「うん。ばいばいー」
後ろ髪を引かれる思いで景ちゃんと別れて、私は職員室へと向かった。