エリート御曹司が花嫁にご指名です
 上昇するエレベーターは、あっという間にラウンジのある四十五階へ到着した。腕時計へ視線を落とし、時間を確認する。

 約束の五分前で、ちょうどいい。

 ここのホテルのラウンジは、何度か友人たちとアフタヌーンティーに来たことがある。和をベースに、オリエンタルな赤と紫を基調としたラグやインテリアが美しいラウンジである。

 時間によってはピアノの生演奏を聴ける。

 ラウンジへ足を踏み入れると、巧みな技術を持った演奏者によってピアノが弾かれ、静かで美しい音色が流れていた。

 演奏時間だったようだ。
 
 出入口の男性スタッフに白石さんの名前を告げ、窓際のソファ椅子に深く腰をかけた男性の元へ案内してもらった。
 
黒ぶち眼鏡をかけた白石さんは、私を見てソファ椅子からすっくと立ち上がった。

「お待たせしてすみません。はじめまして。一条汐里です」

 私は、ビジネスで使うものよりも硬い表情で彼に挨拶した。

「白石です。はじめまして……ど、どうぞ……座ってください」

 顔を赤らませながら白石さんは名乗る。

 白石さんは座時、テーブルに膝をぶつけ、慌てて「す、すみません」と口にした。頭の後ろに手をやり、恥ずかしそうな白石さんに、私も返答に困り、小さく微笑む。

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