エリート御曹司が花嫁にご指名です
 新宿にあるAANの高級ホテルのフレンチレストランを貸し切っての食事会は、毎年豪勢な料理が振る舞われる。

 俺は親父から、重役たちがこぞって汐里を息子の嫁にしたがっていると耳にした。

 は? 汐里は重役たちの受けはよかったが、そこまで?

 その話を聞いてから、俺の胸はずっとモヤモヤしている。

 食事会こそ、重役たちは汐里を懐柔しようとするだろう。いや、『私の息子と会ってみないか』と言ってくるかもしれない。

 重役たちにとって、汐里に恋人がいてもいなくても関係なく、重要なのは嫁ぎ先。

 AANの重役たちならば家柄もよく、裕福であることは間違いない。しかし、その息子たちが人間的に素晴らしいかは愚問であるが。
 
 俺は食事会を仕切る南場に指示をし、重役たちの牽制をかけるために、汐里を自分の隣にさせたのだ。

 そして帰りは、重役たちに隙を見せずに送ることにする。そのために酒も飲まず、自分の車にしたんだ。
 
 これから数日、夏季休暇で汐里に会えない。そして休暇明けには退職の件がある。どうにかして、引き留める作戦に出たい俺だった。

 案の定、食事会のテーブルの席に汐里は戸惑っている様子。

 秘書たちのテーブルに行かせないために、社長秘書の渋谷女史を隣にさせた。そのおかげか、汐里はその席に留まった。

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