エリート御曹司が花嫁にご指名です
 気分が滅入りそうになった俺は、フロントガラスの向こうからやってくる長身の男に目を留めた。

「あれは、壮二じゃないか?」

 病院のほうから、壮二がブラブラと歩いてくる。

「はい。兄です」

 壮二も俺たちの車に気づいた様子で、ニコニコと笑みを浮かべて足早になった。

「優成さん、お疲れさまです。しおりんを送ってくれてありがとうございます」
「壮二、病院から今帰りか?」
「ちょっと呼び出されて」

 ため息とともに苦笑いが出る壮二は、思い出したようにポンと手を打つ。

「あ! そうだ! 優成さん、聞いてくださいよ。しおりんが見合いをするんですよ!!」

 一瞬、俺は理解できなかった。

 誰のことを言っているんだ?

「見合い? 誰が?」
「誰がって、今言ったじゃないですか。しおりんですよ!」

 壮二は焦れたように言って、唖然となっている妹を睨む。

 信じられない、と二の句が継げない俺は、汐里へ鋭い視線を向けた。汐里がパタパタと手を振り、慌てている。

「そ、壮兄! なんで言うのっ!」
「汐里が見合い?」
「そうなんです。自分から父にお見合い相手を探してって頼んだんですよ。汐里が、見合いでしか相手を見つけられないやつに持っていかれるなんて、考えられない!」

 まさか汐里が見合いをするとは夢にも思っていなかった俺は、退職理由を思い出した。

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