エリート御曹司が花嫁にご指名です
 家から出てきた汐里は白いTシャツとデニム姿だった。そんなカジュアルな姿は、だいぶ前から目にしていない。

 彼女は意を決したような表情で、車の横に立つ俺に近づいた。

「桜宮専務」
「乗って」

 助手席側のドアを開けて、汐里を促す。彼女は黙って助手席に乗り込んだ。



 十分後、海が見える埠頭に向かった車を停めた。途中、俺は汐里の様子を何気なく見ながら、考えを巡らせていた。

 エンジンを停止させると、汐里はすぐに車から降りた。

 外は夏の夕暮れで、ムッとしており、海風が吹いても暑さは変わらない。俺は後部座席へスーツのジャケットを脱いで放った。

 ついでに袖も捲り、車の横にいる汐里へ歩を進めた。

「汐里、昨晩の壮二の話は本当なのか?」
「本当です。海外へ行って自分を見つめ直すというのは嘘です。私の望みは結婚して子供が欲しいんです」

 汐里は意志の強さを示すように、はっきり俺に告げる。

「ですから仕事を辞めて、新たな人生を進みたいんです。ここではっきり退職の意を示させていただきます」

 決定的なセリフに、俺は眉をギュッと寄せる。

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