エリート御曹司が花嫁にご指名です
「簡単に人生の伴侶を決めてしまってもいいのか?」
「別に、簡単に夫を見つけるわけではありません」

 俺には汐里の焦る気持ちがわからなかった。苛立たしさを隠せず、そう告げた俺は、ネクタイの結び目に指をかけて緩める。いやに重苦しくなったのだ。

「仕事をしていても、結婚相手は見つけられるだろう?」
「そう思っていました。ですが、この年になるまで……」

 なんだと……? この年になるまで、なんなんだ? まさかな。

 俺は頭によぎった考えを否定する。しかし、その先は汐里から聞かなければならない。

「この年になるまで?」

 俺は彼女に一歩近づき、化粧っ気のない綺麗な顔を見つめる。汐里はためらいを見せ、ピンク色の唇を閉じており、もう一度問いかける。

「汐里?」
「男性とお付き合いしたことがないんです。今後も会社にいては結婚相手を見つけることはできないでしょう。ですから、辞めて真剣に探したいんです」

 ふいに汐里が言いだした時期に違和感を覚え、ある男が思い浮かんだ。

「朝陽が好きだったんだろう?」

 そう聞くと、汐里はポカンと口を開いたまま、俺を見つめる。

< 136 / 268 >

この作品をシェア

pagetop