エリート御曹司が花嫁にご指名です
 俺の父親ほどの年齢の男性だ。ここへ来る前にスイートルームにチェックインした連絡が、彼に伝わったのだろう。

「総支配人。ご無沙汰しております」
「お久しぶりでございます。本日はありがとうございます。すぐにお席をご用意いたしますので」

 動こうとする総支配人に、手を軽く上げて制止する。

「いや、人を探しているだけなので」
「かしこまりました。ごゆっくりご滞在をお楽しみください」

 総支配人は、丁寧に深々と頭を下げると、俺から離れていった。ひとりになった俺は、再びラウンジ内に視線を動かした。

 汐里は窓際のソファ椅子に、ピンと背筋正しく、浅く腰かけていた。

 対面に座るのは、黒ぶちの眼鏡をかけたひょろっとした印象の男だ。

 男性スタッフに注文をしたようだ。その男性スタッフが、俺の横を通り過ぎるところを止める。

「君、たった今オーダーを受けた支払いは、五三〇一号室の桜宮につけといてくれ。そこにいる総支配人伝えてくれればわかる」

 男性スタッフは、近くに立つ総支配人のほうへ顔を向けた。

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