エリート御曹司が花嫁にご指名です
 普段と変わらない姿に戻るために、メイクを施し、リップを塗ったのに、あんなキスでは綺麗になくなっているはず。

 慌ててハンドバッグからメイクポーチを出す私だ。

「さっき、桜宮専務と言っただろう? 覚えているよな? ペナルティ」

 メイクポーチから鏡を出している私の手が止まった。

「あ……」

 だから、あんなキスを……?

「ぺ、ペナルティは私から、ってことでしたよね? ゆ、優成さんからは反則です」

「反則? 俺から温情をかけてやったんだ。早く塗り直せよ」
 
 さっきまで熱くキスをしていた片鱗を見せず、優成さんは言いきる。

 そしてグローブボックスを開けてティッシュを一枚抜き取り、私に渡す。

 それを受け取った私は、急いで鏡を見ながら拭うと、リップを塗った。
 
 そしてもう一度、鏡で自分の顔を確認する。
 
 大丈夫かしら……。もうっ、早くいつもの自分に戻らないと!
 
 そのとき、車体の上のほうからトントントンと音がして、私はビクッと肩を震わせた。

 驚いて視線を泳がせてみれば、運転席の窓から壮兄が屈み込んで覗いている。

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