エリート御曹司が花嫁にご指名です
 一瞬で概況を把握した途端、それは困ると青くなる。

 帰り道、絶対に壮兄は不機嫌で、なにか言われるだろう。家でふたりになったならば、さっさと部屋に入ってしまえばいいけれど。

 もしくは……。

 私は優成さんのほうへ目を向けた。

 ううん。自室のベッドで一緒だなんて、ダメ。

 そんな私の考えを読み取ったかのように、優成さんは笑う。

「汐里、運転代行を呼んでくれないか?」
「えっ?」

 時刻は二十三時になろうとしていた。

「今日は疲れただろう。俺は代行で帰るから早く休むといい。明日連絡する」

 疲れただろう、と言う優成さんの言葉にはなんだか含みがあって、壮兄は苛立たしげにソファから立ち上がった。

「お邪魔虫はいなくなるとしますか」
「壮兄っ」

 シスコンのなせる業なのだろうか。今日の壮兄は嫉妬心むき出し。

 リビングを出ていこうとする足を止めた壮兄は、ためらいを見せてから振り返る。

「……汐里、結婚相手が優成さんでよかったと思っている。でも、大事な妹を取られる気持ちもわかってくれよ。優成さん、汐里をよろしく頼みます」

 いつも『しおりん』と呼ぶ壮兄が『汐里』と口にして、寂しい気持ちに襲われた。壮兄は私に微笑み、優成さんに向かって真面目な顔で腰を折った。


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