エリート御曹司が花嫁にご指名です
「ぺ、ペナルティ……ですか? 記憶にない……あ!」

 車中にいるとき、壮兄が現れてテンパってしまい、しかも優成さんの名前を呼ぶのが恥ずかしくて、『桜宮専務』と口にしたことを思い出した。

 あれはスルーしてくれるとばかり……。

「自分で思い出したか。いい子だ」

 企んでいるような笑みで私を褒める。

「わかっているよな?」
「あれは仕方ないのでは……?」

 軽い口づけだって、まだ慣れていない私に、濃厚なキスなんてハードルが高すぎる。

「約束は約束だ。汐里、キスして」

 優成さんの長い指は、私のひと房の髪に絡め、滑らかな低音で甘く囁く。

「ずっとこの髪に触れてみたいと思っていた。まあ、すでに触れたが」
「えっ……?」
「想像通りに艶やかで、いい香りだ」

 私の目を見つめながら、ひと房を口元に持っていく動作に、数時間前、どんなふうに乱されたのか頭に浮かび、急激に熱くなっていった。

 エアコンが効いたリビングなのに。
「汐里?」

 楽しげな顔つきで、キスするように私を促す優成さんだ。

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