エリート御曹司が花嫁にご指名です
 違うけれど、この揺れ動く気持ちを理由づけるにはちょうどよく、コクッと頷いた。

「あまり痛いようなら、帰宅したほうがいい。結納もあったし、疲れているように見える」

 頬にあった手は、髪を優しく撫でている。それだけで嬉しくなってしまう私は単純だ。

「大丈夫です。これから会議ではないですか?」

 壁にかけられた時計は十四時五十分。十五時から離発着調整会議が入っている。
 今年の十一月、南アフリカのケープタウンで、国際航空運送協会、通称IATAのスロット会議が行われる。

 協会指定の、世界で百四十ほどの混雑空港の担当者と、当該空港に乗り入れ、そして乗り入れを希望する航空会社の代表者が一堂に会する、大々的な世界規模の会議だ。

 優成さんがAANの代表者で、今はその準備で忙しい。

「体調が平気なようなら、汐里も会議に出てくれ」
「……わかりました。戻って用意してきます」
「一緒に行く」
「はい」

 優成さんは執務デスクへ身体を向け、ノートパソコンや書類を手にして、私を部屋から出るように促した。

 そして私に続いて秘書室へ入った優成さんが、デスクに向かっている宮本さんに近づく。

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