エリート御曹司が花嫁にご指名です
 手にしていた書類を彼女に渡すのを横目に、私は自分のデスクへ行き、ノートパソコンを抱えた。
 
 そのとき――。

「どうして私が桜宮専務に同行できないのですか!?」

 宮本さんの切羽詰まったような悲しい声が響いた。

 私はハッとして声のほうを見た。私の視線の先には、優成さんに詰め寄る宮本さんの姿があった。
 
 そして南場秘書室長も驚いた様子で席を立ち、事の成り行きを見守っている。
 
 私もその場に立ったままで、優成さんに近づけない。彼の表情は怒っているようには見えないが、笑っているようにも見えない。

「一人前になったつもりなのか?」

 私でも背中がヒヤリとするくらい、冷たい声だった。

「そ、そうでは……」

 宮本さんはその場にしゃがみ込んで、顔を両手で覆った。泣いてしまったようだ。でも、優成さんは彼女を一瞥しただけで、私に「行くぞ」と声をかけた。
 
 宮本さんが気の毒だと思う。けれど、上司にあんな言い方をした人には、今まで会ったことがない。

 もうすべてなんでもできる、と(おご)ってしまった宮本さんの自業自得なのだろうか。
 
 黙ったまま秘書室を出て、エレベーターに乗り込む優成さんの表情は硬くて、私も声をかけられない。

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